目指す場所はいつも宇宙、アルバトロデザイン代表 猪飼です。 個人的に絵を描いたり、デザインをするときに密かにモチーフにする事が多い宇宙ですが、分からない事が多いのも事実です。 そうした不思議で神秘的なイメージが最大の魅力の1つなのだと思います。 子供の頃から宇宙というとどこか孤独で、洗練されていて、緊張感と好奇心が入り混じったような複雑な印象がありました。 そういったイメージを最も表していたのが、宇宙服だった気がします。 見たことの無いようなオーバーサイズの服にガラスの顔、白を基調にしている所がまた独特な雰囲気を出していますよね。 本日はそんな宇宙服の歴史をデザインから見てみたいと思います! 

1.宇宙服の歴史と概要

時代、モデルにもよりますが、宇宙服一着の値段はなんと10億円程度と言われています!! 7人で行けば70億です。 宇宙服だけを作っている会社があるぐらいですが、なるほどこれは生計がたつなと思ってしまいますね。 現在宇宙服を開発、保有している国はアメリカ、ロシア、中国の3国ですが、カナダや欧州でも研究は進められているそうです。

歴代の宇宙服は主にアメリカ製、ロシア製、中国製に別けられ、かなり性能、特徴に差があります。 例えば、アメリカ製のサイズはM,L,XLの3種類あるそうですが、ロシア製は1サイズだそうです。 確かに1着70億もするならば、いっそ1サイズにして宇宙飛行士のサイズで合わせたほうがいい気もしますが、専門家の第一人者を選ぶのにそれもよくないですよね・・・

世界最初の宇宙服は1931年、ソビエト連邦によって開発された「スカファンドル」だと言われています。 その後ソ連は開発を続け、オーランシリーズと呼ばれる宇宙服を2009年までリリースし続けています。 アメリカの宇宙服もロシアと競争するように開発され続けましたが、途中から従来のロケット型宇宙船からスペースシャトル型へと変更した為、スペースシャトル用宇宙服へとシフトチェンジしていきました。 機内活動用にオレンジの機内与圧服と、船外活動用の宇宙服(EMU)を別々に開発するようになり、それぞれ保湿性、機動性、グローブの操作性やシステム環境などめまぐるしく進歩しています。

2.宇宙服の必要性

宇宙空間というのは無重力だけでなく、超低気圧で、空気のない空間です。 気圧調整をしている宇宙服を着ないで宇宙空間へ出た場合、血液の沸点が一気に下がり、気温30度半ばで体液が沸騰して死んでしまうそうです。 また、気圧のない空間に気圧を作り、空気が漏れないようにカバーしているのが宇宙服なので、宇宙服内の空気は外へ逃げようとパンパンに膨れ上がります。 初めて宇宙遊泳を行った時、この気圧の現象を予想しておらず、膨張した風船のような宇宙服を着た宇宙飛行士は動くことが困難となり危うく宇宙船へ戻れなくなる所だったそうです。

では気圧問題以外に、宇宙空間へ出るには最低限どのような機能が必要なのでしょうか。 まずは「機動性」です。 上記の通り、気圧の問題で服の中は風船のように膨れ上がります。 膨れても動けるように内部に円滑な間接部分を設けたような服でなくては動くこともできません。 また、空気抵抗のない宇宙空間では連続移動を止めるために窒素ガス噴射によって姿勢維持、移動をします。

次に生命維持装置です。 酸素と窒素を混ぜた空気を供給し、二酸化炭素を排出しなくては酸欠で気絶してしまいますし、体温調節器がなくてはすぐに凍え死んでしまいます。

次は、通信機能です。 音のない空間で外部との連絡は全て通信機を使わなくてはなりません。

そして最後は宇宙塵、デブリ等の外的衝撃からの防護です。 これは意外と大きな問題で、現在宇宙じゅうに浮遊している細かいゴミに接触すると、かなりの耐久性がないと身体を貫通してしまいます。

3.宇宙服の将来

現在宇宙服研究の最高峰であるNASAは明確な理想の次世代型宇宙服の目標値を細かく打ち出しています。おおまかにまとめると、以下の点です。

・ 宇宙服内の運用気圧を1気圧まで上げる (現在は0.4気圧)
・ 総重量20kg (現在は120kg)
・ 連続活動時間 1週間 (現在は7時間程度)
・ 生命維持装置の完全自動化 (現在は温度調節などは手動で行っている)
・ 燃料電池の搭載 (現在は銀亜鉛電池を使用している)
・ 宇宙服にパワーアシスト機能を搭載 (人力だけでなく、機械が力をサポートしてくれる機能)

現状からするとかなり理想を言っているようですが、この次世代宇宙服は2010年の国際宇宙ステーション計画、そして2020年の月面探査計画へ向けて本格的に進められているそうです。

4.宇宙服のデザイン

いくら高価な作業服とはいえ、宇宙服にはもはやデザインの余地などなく、完全に機能重視です。 それが故の機能美がとても美しく、神秘的な姿の様でもあります。 現在小型、というかスリムな形の宇宙服を開発中らしくあの大きな潜水服のような形自体いつかオールド・ファッションになってしまうのかもしれませんね。 では世界の宇宙服デザインをご紹介します。

Navy Mark IV  /  ネイビー マークIV

1959年から1963年に行われたマーキュリー計画用の宇宙服です。 マーキュリー計画では、アメリカにとって初めての有人宇宙飛行でした。 当時はあまり宇宙空間へ出る必要が無かった為、機内用重視の装備でかなりスリムな形です。

Gemini space suit  /  ジェミニ宇宙服

アメリカのジェミニ計画の機外活動の為に作られた宇宙服です。 ジェミニ計画は1965年から1966年に行われたアメリカ二度目の有人宇宙飛行計画です。 ジェミニ計画は後の月面着陸アポロ計画の為の技術開発のプロジェクトでした。 10回ほど有人飛行が実施されたといいます。

Apollo/Skylab A7L  /  アポロ宇宙服

アメリカのNASAによる人類初の月への有人宇宙飛行計画であるアポロ計画で1961年から1972年にかけて使用された宇宙服です。 現在の宇宙服の原型とも言える形を作り上げました。 機外活動に重点を置き、一気に重装備になりました。

アポロ月面上陸映像 2倍速

 1969 Apollo 11 Neil Armstrong NASA FIRST MOON LANDING
音と映像が当時のいい味を出しています。

Launch Entry Suit (LES) /  機内用スーツ 1988 to 1994

6年間アメリカのスペースシャトル用機内エントリースーツとして活用された宇宙服です。 強い圧力に耐えられる構造をしているとともに、今までにない機能性を持った構造をしています。 この頃より機内服と機外服が明確に分類されるようになりました。

  NASA Full Launch – Space Shuttle Discovery / スペースシャトル発射時の機内映像
意外と後部座席の人は忙しくなさそうですね。

On board view of a Space Shuttle launch sequence / スペースシャトルの機外からの発射映像

Extravehicular Mobility Unit (EMU) / 船外活動ユニット

現在現役の船外活動ユニット 通称EMUです。  ドッキングやランデブーといった船外活動を長時間行えるように作り上げられた多機能型の宇宙服で、飛躍的に連続活動時間も増えました。 下着も含めて、14層もの生地から構成され、熱環境や衝撃に対して絶大な耐久力を持っています。 現在は次世代活動ユニットの為このEMUの軽量化が進められています。

A woman donning the Shuttle EMU space suit
EMUの着方が分かる動画です

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