ここのところ事務所の隣で一戸建て建築が行われているため、朝から工事の音に悩まされているアルバトロデザイン代表 猪飼です。 事務所が揺れるのですが、もうかなり慣れました笑 さて、本日はイギリスを代表するグラフィティアーティスト、Banksyバンクシーについてです。 ロンドンの町を歩いていると、今でもちょこちょこ見つけることが出来る彼の作品ですが、実はロンドンではだいぶ前から大問題になっています。 本陣はそんなロンドンのアーテイストと、落書きのギャップに焦点を当ててみようと思います。


1.謎多きゲリラ・アーティストBanksy バンクシー

 バンクシーは、英国のブリストル出身の仮面アーティストと呼ばれています。 なぜ仮面アーティストかというと、本人は一切の情報をリークせず本名、年齢、容姿など全て謎に包まれています。 これはグラフィティという性質上、違法的な活動がかなり多い為発表すると逮捕されてしまうからです。 

 勝手にロンドンの町中にグラフィティを描き、イギリス人らしい皮肉的なメッセージを残すという彼のスタイルは2000年頃より顕著になります。 はじめは街角の建物や、壁に落書きしていた程度だったのですが、その完成度の高い絵が人気を呼び、バンクシー・フォロワーやバンクー・ファンが激増します。 謎の人物という設定も手伝い、キッチュな若者達から絶大な人気を呼ぶようになったバンクシーは、自身の活動フィールドを広げ、活動内容も過激になっていきます。 ただの街角から地下鉄や美術館、動物園などへ侵入し、名実共に国際的なゲリラ・アーティストとなります。

 夜中にこっそりと不法侵入し、落書きをして逃げるというバンクシーのスタイルも徐々に変化していきます。 バンクシーの活動の共通点は「いたずら」的な活動です。 勝手に自分の作品を美術館に展示したり、勝手に作ったパリス・ヒルトンのCDアルバムをイギリス中のレコードショップに設置したり(CDやブックレットまで細かく皮肉をこめて作り上げ、実際に数件のレコードショップでは売り上げてしまったそうです)、皮肉っぽいいたずらにメッセージを乗せる活動が彼の人気の根底にあります。

2.バンクシーのゲリラ・アートと世論の反応

 バンクシーの最大の問題点は、その作品や活動のクオリティの高さです。 ある意味天才的ないたずら心や、皮肉心を絶妙な場所に作り上げます。 はじめは警察や市はバンクシーを追い、一部の若者はバンクシーを褒め称える、というよくある単純な構図でした。 しかし、バンクシーの活動が続き、その人気が頂点に達したときにその構図に変化が生まれました。

 国民の強力な支持により、警察や市がバンクシーを認めだしました。 バンクシーの描いた落書きはネットの国民投票により保存される事となり、バンクシーにグラフィティを描かれた壁は、オークションでアート作品として取引されるようになりました。

 さらにバンクシーの存在を決定付けたのは、美術館が彼の存在や作品をアートとして認めた事です。 ゲリラ・アートとして無許可で勝手に美術館に展示したバンクシーの作品を、美術館側がアート作品として逆に展示をしました。 これは既にイギリスのアート業界が違法性の強いバンクシーの作品と存在を立派なアートとして評価しているという事実を決定付けることとなりました。

2006年6月、ブリストルに裸の男がバスルームの窓からぶら下がっている壁画を制作。この作品は取り除かれるべきか、そのままにしておくべきかで論争を巻き起こした。インターネット上でのディスカッションでは97%の人々が取り除くべきでないという立場を支持したため、そのままになっている。 (Wikipediaより)

 

3.そんなバンクシーの今

 バンクシーはイギリスで完全に認められてしまい、彼の描いたグラフィティは消される事もなくなり(国立の建物に巨大な落書きをした時は今でも消されますが)、バンクシーの作品を見て回るガイドマップやサイトまで作られました。 作品は美術館や展示会に並び、オークションにかけられ何百万という価格がつけられています。 壁に書いた作品は観光名所となりました。 今も多くのアーティストからアルバム・アートの制作依頼を受けています。(これはほとんど断っているそうです)

 そんな中、バンクシー本人へのインタビューも多く、英国ガーディアン誌や、BBC、日本の番組「アンビリーバボー」など、様々なメディアからのアプローチを受けています。 はじめは偽名を使い、顔や容姿も映さない完璧な匿名性を保っていましたが、やがて世間から受け入れられることで2008年にはついに本名まで明かされました。 (ブリストル出身の1973年生まれのロバート・カニンガムという名前だそうです)

 バンクシーは多くのサポーターに囲まれ、活動範囲をさらに国際的に広げ、戦争中のヨルダン、イスラエルの国境で両軍に銃で狙われながらグラフィティを描き上げたりと、国際問題にも参入しています。

 すっかり謎のベールが剥がされた感のあるバンクシーですが、現在はロンドンのSOHOにパートナーの写真家スティーブの名義でギャラリーを所有し、バンクシーの作品を購入できる場所までできています。

4.バンクシー問題まとめ

 バンクシーはグラフィティを芸術にまで昇華させただけでなく、不法侵入などの違法要素を含むゲリラ的な活動までをも世論の支持により法律すらも塗り替えていきました。 それは本人が望んだことなのか、望まなかったことなのかはわかりませんが、ある意味民主主義の骨頂なのかもしれません。

 バンクシーの絵は違法にならないのに、他のグラフィティはなぜ違法なのか? 人気があるからってバンクシーはなにをしても許されるのか? じゃあバンクシーと同じ事をしてもいいのか? という議論はバンクシー議論といわれるほど海外ではよく議論される内容でもあります。 バンクシーに落書きをされた場所は確実に観光客が増えたり、許可なき落書きでも信じられない価格で壁ごと売れるというのもまた事実で、明確な答えはまだなくてもいいのかもしれません。 全ての決まりも矛盾も、多数派が決定し、全ての多数派は元々は少数派であるという鶏と卵状態な結論で本日のバンクシー議論は終了とさせていただきます。

 でも、こういう人が世界にいるというのはおもしろいですよね。

 

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