メメント・モリとは、現代では芸術のテーマの1つであり、平たく言うと「死を忘れるな」という思想の警句です。 いつかは、死んでしまうということを忘れずに生きろ、という意味がこめられているようですが、元々の意味はだいぶ違ったようです。


1.メメント・モリとは

その言葉の発祥は聖書であると言われています。 イザヤ書22:13の「食べ、飲もう。我々は明日死ぬのだから」という文章です。 しかしこの考えは死が強く印象には残りますが、実は「あの世へは財産や食べ物、酒はもっていけないのだから、生きているうちは大いに楽しもう」というニュアンスのものでした。 パレードやイベントの際にメメント・モリ!と叫ぶことである意味「今夜はおおいに楽しもう!」というような使われ方をされていました。

2.メメント・モリとキリスト教

しかし、キリスト教が強く関わるようになりメメント・モリの使われ方は変わってきました。 飢餓や貧困に苦しむ時代という背景もあり、強い戒めの言葉を必要としていたキリスト教はメメント・モリを「いずれは死ぬのだから現世の富や名声は空虚である」という捉え方を強調し、広めるようになります。 また、生まれ変わりという思想の元来世を思うことで現在の苦しみや不安、不満を解消させようとしたのかもしれません。

死は王族にも、貴族にも、貧民にも、病人にも平等に訪れ、皆徳によって平等に裁かれる、とする宗教的な思想からメメント・モリの精神は市民の間に広がっていきます。 顕著に現れたのが葬式や、芸術作品だといいます。 最も死を思わせる墓場には、死というものを明確に現すかのごとく、骸骨や天使をモチーフにした彫刻や立像が彫られるようになります。

3.イラスト、芸術品としてのメメント・モリ

メメント・モリは非常に多くイラストレーションとして描かれた芸術モチーフでした。 まず宗教的思想をもっともわかりやすく表すことができるという意味合いや、識字率の問題があった為もありますが、なによりも骸骨や死をモチーフにした絵というのは他のそれよりもかなりインパクトが強く、図らずも死というテーマはイラストや芸術というジャンルにおいて非常に相性がよかった為とも言えます。

4.メキシコの「死者の日」とメメント・モリ

メメント・モリはキリスト教、特にカトリック(カソリック)によって強い意味を持ちました。 しかし、時代と共に
治安や貧困は収まり、キリスト教の掲げた死と生まれ変わりを示すメメント・モリの精神は弱まっていきました。 そんな中、カトリックと共にメメント・モリの精神はメキシコへとたどり着きます。

メキシコでは、先住民族の考えから全ての死者の魂へ祈りをささげ、鎮魂するという考えがありました。 その考えとぴったりはまったメメント・モリの精神はメキシコで息を吹き返します。 メキシコの死者の日は、陰気な雰囲気は無く、死んでいったものを交えて祭りを行うというスタイルをとっています。
町中に墓をモチーフにしたオフレンダと呼ばれる祭壇を作り、墓地を装飾し、夜には露店やバンドの演奏で盛大に盛り上がります。

メキシコの死者の日は毎年10月31日(前夜祭)から11月2日までの3日間とされ、特に1日は子供の魂が墓に戻り、2日は大人の魂が戻るとされています。お供え物も1日は子供向けなもの、2日はお酒やタバコなどに変わり、祭りの盛り上がり方もすこし変わります。

死者を恐れたり忘れたりせず、年に一度、生者も死者もみんなでおおいに楽しむ、という独自の発想は実は当初のメメント・モリの精神に一番近いのかもしれません。

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