事務所で飼っているエビがついにあと一匹、アルバトロデザイン代表 猪飼です。 水槽の水草はよく育つのに、生物は維持が難しいですね。 水質が変化しにくい大きな水槽が欲しいです。 さて、本日紹介するのは生きた芸術、テオ・ヤンセンのビーチ・アニマルです。 完全に風で駆動し、独立駆動する夢の芸術作品です。 かなり有名なので映像や写真は見た事があるかもしれません。 実はこのプロジェクト、ただの人工生物としてだけでなく、移動手段や建築にまで色々と応用が考えられています。 もはや芸術の域を超えようとしているビーチ・アニマル達の今に迫ります!


1.テオ・ヤンセン

テオ・ヤンセンTheo Jansenはオランダ出身の芸術家です。 1948年にオランダはスヘーヴェニンゲンに生まれ(同名のパスタなどで有名な所です:よくスケベニンゲンとも呼ばれています・・・)、デルフト大学で物理学を学びました。 スヘーヴェニンゲンはビーチで有名な地でもあり、この出身地はテオ・ヤンセンの作品に少なからず影響を与えています。 1975年に画家に転向してから、物理学と芸術の融合へと傾倒していきます。 1990年にアニマリ(ビーチアニマル)のプロジェクトを発動し、今までにない新しい動物の制作に取り組みます。

Theo Jansen’s Strandbeests (BBC)

2.ビーチアニマル = Strandbeest = 砂浜動物

ビーチアニマルはオランダ語で Stramdbeest(ストランド・ビースト)と呼ばれ、テオ・ヤンセンのプロジェクトの要となる新しいモデル生命体です。 エネルギー源は風で、プラスチックチューブで構成されています。 テオ・ヤンセン自身の手により17年間進化し続けているビーチアニマルは何度も身体構造の変化を遂げ、現在の最新型はアニマルス・ペルセピエーレ(砂浜の知覚生物)と呼ばれています。

テオ・ヤンセンは物理学、芸術だけでなく、生物学や進化学までを学習し、このビーチアニマルの進化を進めています。 その具体的手法としては、まずはコンピューター等を使い物理学的な負荷を調べて、最も効率のいい動きを計測したりと、緻密な計算を続けました。 しかし構造体が複雑化するにつれ、コンピュータによる計測よりも実際に何体も作り出し、遺伝子淘汰のように優秀な奴を集めてハイブリッドしていくという手法を取るようになりました。

砂浜にビーチアニマル達を並べてレースをしたりして、足の速い固体、安定した動きをする固体、より効率よく動く固体、重いものを運べる固体、等をハイブリッドし続けました。 こうした構造はプラスチックのフレーム自体がデータであり、テオ・ヤンセンはこのフレーム構造事態をDNAと呼んでいます。 また、神経系として透明のチューブやゴム紐等によって風を捕らえたり、方向性を決める知覚機能も備えてあります。

  Simulation CGI of Theo Jansen ‘s Mechanism

strandbeest evolution

3.進化し続けるビーチアニマル

テオ・ヤンセンとそのチームの遺伝操作により、ビーチアニマルは日々進化を遂げています。 現在では過去の良質な遺伝子を集めた知覚的なビーチアニマルが生まれ、風の原動力を体内に蓄積して動き、土地の状況にあわせて歩き、障害物を触覚で感知して方向転換まで行えるようになりました。

このビーチアニマルの中には、乗り込むことができる物もあります。 初期の世代であるアニマルス・リノセロス・トランスポート(Animaris Rhinoceros Transport)は重さが2トン、体長4.7メートルもあります。 骨格は鉄で作られ、他のビーチアニマルと違いポリエステルの皮膚も兼ね備えています。 このリノセロスの体内にはシートや寝室が用意され、動く建築としても注目されています。 これだけ大きな体を持ち、重量もあるのに、大人1人の力で最初に力を与えれば後は風さえ吹けば自立駆動する事が可能です。

 

 Theo Jansen – Animaris Rhinoceros

  

4.テオ・ヤンセンの夢

テオ・ヤンセンは現在イップンブルグの街に住み、町を上げての援助も受けています。 オランダという国はとてもアートに対して寛大で、アートとは生活と一体化しているべきであるという意識が強くあります。 街や国がパトロンとなってアーティストを援助し、アーティストは町中にアート作品を残し、アートというものを若い世代に無償で教えて貢献するというスタイルが文化としてあります。
ゴッホやレンブラント、フェルメールやデック・ブルーナといったオランダの芸術家もこうしたオランダの体制に助けられてきたのです。

そんなテオ・ヤンセンの夢はこのビーチ・アニマル達をもっと進化させ、完全に自立させてやることだそうです。 自分達だけで走り回れるビーチアニマルを浜辺に離し、好きな方向へと旅立つ彼の子供達を見守るテオ・ヤンセンの姿が目に浮かびますね!

Theo Jansen “Works of Art” / テオヤンセン 砂浜の生命体

5.テオ・ヤンセンまとめ

BMWのCMで使われることで一気に着目されたテオ・ヤンセンのビーチ・アニマルですが初めてみた時はコンセプトも、造形にもとても感動しました。 それは形からできた自立する造形でなくて、自立する為の機能からできた造形だからなのかもしれませんね。 この新しい生命体達がテオ・ヤンセンの力によってどこまで進化するのかがとても楽しみです。

Theo Jansen: The art of creating creatures

THEO JANSEN: ingenios mecánicos capaces de cobrar vida

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