最近はアジア全域から優れたアーティストやデザイナーの台頭が目立ちます。 香港や中国本土、台湾や韓国、タイ等から優れたクリエイターが国境を越えて次々と輩出されています。個人的にもアジア圏の知り合いにもとても優れた感性をもつ人が多く、日本的な感覚とは違ったひねりがあっておもしろいです。

1.アジアン・クリエイターの勢力

かつて1980年代まではデザインや現代アート等の分野ではアジアといえば日本というぐらい日本がアジア代表を独占した時代もありました。 たとえばファッションなら川久保玲のコムデギャルソンや、ヨージヤマモトが世界的にトップデザイナーと認められたり、アニメやマンガでもAKIRAや攻殻機動隊が世界的にヒットしたりと、日本は世界基準の中でも「一味違ったアート大国」という地位を築き始めていた時代です。

しかし近年になり時代は変わり、日本以外のアジア諸国がどんどん力をもち、日本を越えて世界へ羽ばたいていく時代がきました。 デザインでは台湾や韓国からも優秀なデザイナーが多く輩出され、現代アートでは中国や東南アジアも有力です。

アジアン・クリエイター達の種類はいくつかタイプに別けられると思います。 各国の文化やナショナリズムを作品に全面的に出すことで成功した者や、西洋的な表現様式を完全に取り入れる事に成功した者など、様々です。 しかし我々日本人として見逃すことが出来ないのが、日本の文化、サブカルチャーに強い影響を受けたクリエイター達です。 この種類のクリエイターは実はかなりの数にのぼり、日本のマンガやアニメ、デザイン、映画などの文化に強い憧れを抱いているうちに、踏襲を通り過ぎて独自の世界を築き上げた人たちが現れたのです。

個人的に、デザインやアートの「クリエイティブな部分」というのは「挨拶」や「コミュニケーション」みたいなものだと考えています。 こちらの言葉にならない発信に世界の誰かが聞き入れ、答えてくれたのです。 こうしたクリエイティビティの広がり方は、実にこれからのグローバリビティに適っていると思うのです。

わかりにくい説明ではありますが、単純に日本の発信したものに誰かが答えてくれて、さらに作風をアレンジした作品を「返事」のように返してくれるということはとても興味深い事ですね。

2.チョウ・ファン (Zhou Fan)

1983年生まれ (若いですね!) のチョウ・ファンは純粋な中国育ちの現代アーティストです。 2006年に中国の陝西大学を卒業しました。 2007年以降は、中国での展示作品が世界的に注目され、アメリカでの展示が成功すると共に世界中から展示のオファーを受けることとなります。

独特なのはそのカラーリングもさることながら、細かい線画での描写です。 大友克洋のAKIRAを見た事がある人であれば「あ!!」と思ったに違いありません。 まさに、AKIRAの鉄男の体が崩壊するシーンにとても似ています。 しかしあのシーンは子供心にとてもトラウマになる描写でした・・・ 色鮮やかながらも細かい描写で描かれた複合体は、チェコのシュルリアリスムアーティスト、ヤン・シュバンクマイエルや内臓アーティストで有名なグレゴリー・ヤコブセンをも彷彿とさせられますね。

アキラの鉄男の崩壊シーンは個人的にも心に残る場面なので載せておきます。


ヤン・シュバンクマイエルのコラージュ作品


グレゴリー・ヤコブセン作品の一部


大友克洋 AKIRA6巻 より 鉄男の崩壊シーン

2.チョウ・ファン (Zhou Fan)の作品

2007年に、トップ25の中国先鋭アーティストに選ばれたチョウ・ファンは、中国だけでなく、日本を含む世界での現代アーティストとしての地位を確立しようとしています。 チョウ・ファンの作品の革新的な所は、細かくも彩色のあるペイントに絶妙なバランスで人間とモチーフが組み合わされていている所です。 こうした漫画的なタッチの作品は日本の現代アーティストである会田誠や束芋にも通じるところがあります。

内臓等のエグい描写を得意とするという点では他に様々な現代アーティストがおこなっていますが、チョウ・ファンの作品はそのエグさがメッセージに基づけられてる訳ではなく、色彩やアニメ的表現の一環として利用されています。 こうした手法としては、香港などを中心にフォロワーが生まれている村上隆的なアニメ描写的な要素もあるのかもしれませんね。

似ているテイストの現代アーティストは多数存在しますが、どこか完成度が高いなぁ~と思わせるのが今回のチョウ・ファンの作品のすごいところですね。

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