アートアニメーションの大傑作 イエローサブマリン




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  ビートルズのイエローサブマリンと言えば知らない人はいないと思います。しかし、アニメ「イエローサブマリン」を実際に全て観た人はそれほどいないのかもしれません。もう観た人も、これから観るかもしれない人も、この文章を読んでさらに”アートアニメーション”の傑作「イエローサブマン」を楽しんでもらえたら幸いです。

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1.アートアニメーションとは
  アートアニメーションという言葉は、最近日本でもよく使われるようになって来ました。チェコアニメの巨匠ヤン・シュバンクマイエルや、アメリカのクェイ兄弟、ベルギーのラウル・セルヴェ、ロシアのユーリ・ノルシュテイン、フランスのルネ・ラルー等といった有名なアートアニメーション作家に日本のアニメーターは深く影響を受けています。宮崎駿や、押井守等日本を代表するアニメ監督も世界のアートアニメーションから多大な影響を受けているのは作品からも鮮明に観てとれます。

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アートアニメーション Fantastic Planet ルネ・ラルー監督 1973年 フランス、チェコ=スロヴァキア合作

2.アートアニメーションの楽しみ方
  日本には芸術という文化は昔からありますが、アートという文化を認識はできても、アートの楽しみ方はまだ浸透していないと思います。勿論、アートの楽しみ方は十人十色です。しかし共通して言えるのは「感じて楽しむ」という事ではないかと思います。映画や音楽などのエンターテイメントは、観たり、聴いて楽しむものだとすればアートはノージャンルで感じて楽しむという概念があります。つまり重要なのはぼんやりとしたイメージや柔軟な感覚であり、世界観となるわけです。そこで私は今回のイエローサブマリンはアートアニメーションとしてとても優秀な作品だと思うのです。

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3.エンターテイメントとアートのハイ・クオリティな融合
  アートアニメーションは、アニメーションを使って言葉で言い表せない独自な世界観を表現するアートです。従って、ストーリーや構成よりもイメージが先行されて作られる為、イメージを感じるという「アート」に慣れていないアジア人にはとっつきにくい作品もあります。しかしこのイエローサブマリンは、ビートルズという最高の音楽をバックグラウンドに据えて、素晴らしい色彩とゆるやかなストーリーをミュージカル仕立てにし、テンポよく話が進むというエンターテイメント性とアートの見事な融合がなされています。一言で言うと、イエローサブマリンは

「60年代後期~70年代初期を象徴するポップアートを、ビートルズの音楽に載せてアニメーションを見ながら堪能できる作品」

と言えます。60~70年代のポップアートと言えば、アンディウォーホルで有名なシルク版等を多用したアートや、ヒッピーやドラッグ等の文化から発祥したサイケデリックアートの時代です。
091201_051968年上映当時のイエローサブマリン上映広告

4.映画イエローサブマリンのできるまで

  1967年、新作映画はアニメーションと聞いてビートルズメンバーは企画はOKしたものの、映画自体をかなり馬鹿にしていたそうです。アニメの音声すら声優に任せ、インドへ修行に出かけたメンバーは「出来の悪い曲はイエロー・サブマリンで流せばちょうどいい」等といって冗談を言っていました。しかしインドから戻り制作途中のアニメーションを観て、アート作品に敏感なジョンを筆頭にメンバーは内容を大変気に入り、映画の最後にはメンバー全員で出演する事を約束しました。
 こうして最後の出演と、楽曲提供以外はビートルズはほとんど関わっていないビートルズアニメ映画「イエローサブマリン」が完成しました。1968~1969年にかけて公開された映画は、世界中で高い評価を得ました。特にポップアート全盛期のアメリカで強く支持され、ビートルズだけではなく映像自体が伝説のものとなりました。現在でも世界中の映像関係の大学では、エンターテイメントととの融合に最も成功したアートアニメーションとして教材として取り扱われています。
  80年代に入り、ジョンは音楽活動を辞めて家でヨーコと静かな生活をしていました。そこに学校でイエローサブマリンを観た息子ショーンが初めて自分の父親がミュージシャンであると知り、感動した様子を見てジョンは音楽活動を再開したとも言われています。

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5.映画イエローサブマリンの見所
  次々とめまぐるしく変わるサイケデリックな映像、曖昧なミュージカル・ストーリー、やる気のないメンバーの声(声優は本人ではなく、やる気のない地声は意図的なもの)、ビートルズの音楽、そんな要素がごちゃごちゃに詰め込まれた映画です。一度全て観るとすこし疲れるし、退屈です。それは、この作品がアート性が強く、いわゆる映画のセオリーに沿っていないからです。しかしだからこそ、この映画にしかない世界観があるのです。当時「LOVE」をテーマに、全てを投げ出して愛と音楽があればいいじゃないか、という「フラワームーブメント」に則った作品であった為、本国イギリスではドラッグ・フィルムと評された程です。
 バックグラウンドはさておき、世界観を表現するというアートアニメーションの醍醐味は完璧だと思います。観れば観るほど、ああ、あのシーンがなんか癖になる、という感じです。観れば観るほどとりつかれる映画、そしてぴったりと映像と一緒に頭に刷り込まれるビートルズの音楽、これが私の思う見所の全てです。

 

イエローサブマリンの映像も数点貼り付けておきますが、この映画の肝は美しい映像にあるので、ここにある動画はかなり画質が落ちている事をあらかじめご理解ください。実際の映像は色彩がすごく綺麗です。

イエローサブマリン 1968年 予告編

 
イエローサブマリン内  『All You Need Is Love』
物語としてはクライマックスの、遥々助けに来たビートルズがLOVEで支配者と戦うシーンです

イエローサブマリン内  『Lucy in the Sky with Diamond』
かなりアート性の強いサイケデリックな映像です

イエローサブマリン内  『LWhen I’m 64』
ほのぼのしていて、私の大好きな曲です。

イエローサブマリン内  『Nowhere Man』
映画内オリジナルキャラクターのジェイミーがとてもきもかわいいです。

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2 Comments

  1. こんにちは
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    ご検討のほどよろしくお願いたします。

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  2. Jun Amanto といいます!
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