どうも横内です。本日はコヤニスカッツィについてです。ご存知の方もいらっしゃるとは思いますがこの映画は音楽と映像のみで構成されていて、ナレーションや台詞が一切挿入されておりません。
好きな人は相当好きな作品に仕上がっております。

コヤニスカッツィ

コヤニスカッツィは1982年製作のドキュメンタリー映画で、監督はゴッドフリー・レッジョ、ミニマリスト作曲家のフィリップ・グラスが音楽を担当しました。撮影ロン・フリッケ。スローモーションと微速度撮影(低速度撮影)の映像を取り入れ、アメリカ国内の都市風景と自然景観で構成された斬新な作品になっております。

この作品にはナレーションや台詞が一切挿入されず、一連の映像とバックに流れる音楽の提示という形式で統一されています。タイトルの「コヤニスカッツィ」とは、ホピの言葉(アメリカ・インディアン部族のひとつ)で「常軌を逸し、混乱した生活。平衡を失った世界」の意。作中に映し出される現代人の生活様式への言及だそうです。

本作は『カッツィ三部作』の第一作で、続編として、1988年の『ポワカッツィ』、2002年の『ナコイカッツィ』が製作されました。三部作はそれぞれ、「人間」「自然」「テクノロジー」の関係を違った観点から追っていく内容に仕上がっております。『コヤニスカッツィ』は三部作の中でもっとも知られた一編で、カルトフィルムとされています。権利問題から1990年代は絶版状態だったそうです。

繰り返される音楽をバックに、いくつかの映像が途切れなく続くという構成です。(DVDではチャプター分けされ、サウンドトラックのセクション毎の曲名がチャプタータイトルとなっている模様。)

1,Beginning


最初のイメージは、ユタ州キャニオンランズ国立公園にあるホースシュー・キャニオンの「グレート・ギャラリー」に刻まれているフレモント・インディアンの絵文字です。数シーン経て映し出される巨大な天然の天窓アーチは、キャニオンランズ国立公園内のニードルスにあるPaul Bunyan’s Potty だそうです。このセクションでは、フレモント族のおぼろげな壁画(王冠を被ったひと際背の高い影のまわりに集うひょろ長い影の壁画)の映像などが登場します。

2,Organic


次に重ねられるイメージは、アポロ12号計画のサターンVロケット打ち上げのクローズアップです。荒涼とした砂漠の景観へと徐々にフェードアウトし、雲の生成や峡谷の湖面など自然現象の記録映像へと進みます。

3,Resource


ここから自然への人間の介入についての洞察が織り込まれていきます。低空で移動撮影された波立つ湖面のショットから、同じく低空移動撮影の刈り整えられた農園のショットへの移行では、人間の技術の存在が暗示されます。次にパウエル湖の水をたたえた峡谷の岩々の空撮映像から、黒煙を巻き上げる採掘用トラックのシーンが始まります。 砂漠に設置された送電塔と送電線のショットが続き、鉱石採掘、大規模発電所、グレンキャニオンダム、ネバダ砂漠での原子爆弾実験などを交えて、人間の自然への絶え間ない介入が描写されています。

4,Vessels


続く“Vessels”(就航船)と題されたチャプターでは、2機のユナイテッド航空の商用機ボーイング747が滑走路を地上走行する3分32秒の作品中で最長の1ショットが挿入されます。この”Vessels”のチャプターは、ロサンゼルスのフリーウェイの膨大な量の交通の流れや巨大な車両集積施設などのシーンで構成されているそうです。また、整然と配列された大量の戦車群の記録映像、B-1爆撃機の尾翼からのショットなどが続きます。

5,Cloudscape


こののチャプターでは人間の営みと自然の営みをあわせて提示する手法が再び現れ、雲海の影がニューヨーク市の摩天楼を横切る様子が微速度撮影で写し出されます。

6,Pruitt-Igoe


次のシーケンス“Pruitt-Igoe”(プルーイット・アイゴー)では破綻してしまった宅地開発のショットが続き、プルーイット・アイゴーという計画団地の崩壊と爆破による取り壊しの記録映像が挿入される。プルーイット・アイゴーはかつてはモダニズムのデザインで知られていましたが、居住者たちの生活環境の破綻から瞬く間に失敗プロジェクトと化した計画団地です。このシーケンスは巨大建築の爆破映像と吹き飛ぶテレビのショットで締めくくられる。

7,Slow-People


このチャプターは、空港カウンターで列をなす大群衆を早回しで捕らえたシーンから始まります。スローモーションで都市を闊歩する人の群れがこれに続きます。

8,The Grid


“The Grid” は最も長いチャプターで約22分に及びます。映画作品としてのこのシーケンスのテーマは、「現代における生の営みのスピード」だと言えます。大都市のビル群と摩天楼のガラスに反射する日没のショットで幕を開け、現代的な都市生活のあらゆる側面が映し出されていく。都市生活の典型的なひとこまが微速度撮影による早回しで次々に流れ、現代のテクノロジーと人々の生活パターンが互いにもたらしあった影響が映像で表現されています。
まずは、夜間に高層ビルから捉えた都市に張り巡らされた交通網のショット。そして、高層ビルの後ろを横切っていく満月の映像が続きます。シーンは遠景から近景へと移り、高速道路の車の流れが現れます。都市の上に日が昇っていく光景とともに、出勤する人々のショットとなる。ここで映画はいったん通常スピードに戻り、食品加工場の流れ作業でソーセージが次々にパッケージングされるシーンがはさまれます。手紙の仕分け、ジーンズの縫いつけ、テレビの組み立て工程など様々な作業が流れ作業で着々と進められていきます。ベルトコンベヤーを流れるホットドッグとエスカレーターを次々と上っていく人々のショットが途切れなく流れ、娯楽産業のシーンでも早回しとカット挿入のペース、バックに流れる音楽はスピードを緩めることなく続いていきます。このスピードを保ったまま、人々が食べ、遊び、買い物をし、働く光景が現われる。次に自動車組み立てラインのシーンが現れ、このシーケンスの一巡目が終了。
場面は再び高速道路のシーンとなり、夜中の高速道路のカットと対をなす日中の高速道路のショットが始まります。これまで遠景から撮影されていた視点が変化し、移動する車内からの光景、ショッピングカートやお菓子工場のベルトコンベヤーの上から撮影された光景、テレビの組み立てラインの撮影、エレベーターの上り下りの様子など一人称の視点を取った映像にまとめられます。カリフォルニア州道480号線の高架式高速道路(1989年の地震で倒壊)やワールドトレードセンターにあったPATHの駅へ上っていくエスカレーターのシーンも含まれています。その後、高速でザッピングされていくテレビが現れ、自動車事故、超スピードのため映像がぼやけたニュースキャスター、アメフトの試合、黒板に錠剤の商品名を書く人影などの映像が次々に挿入される。このチャプターには一人の男性と二組のカップルがカメラに対して反応するスローモーションのシーンもあり、一人目の男性は無頓着、二人目の男性は撮影に対して少々混乱を見せ、一人の女性は苛立った様子を見せています。車内から撮影されていたショットは、最後にはこれまでにないスピードに達し、映像的な結末をみせないまま終了します。主題の反復を繰り返していたバックの音楽も音楽的な結末を聞かせぬまま終了します。

9,Microchips


集積回路の写真と都市の衛星写真が対比され、レイアウト上の明らかな類似が映像で指摘されます。

10,Prophecies

このチャプターは、都市生活の肖像として物乞いから初舞台を控えた女優まで様々な人物のショットで構成されます。ここで登場する消防士たちが街頭で煙に巻かれて活動しているシーンは、1977年のニューヨーク大停電で起きた暴動の後始末の一幕です。

11,Ending

“Ending”は、1960年代初頭のマーキュリー計画の打ち上げ用無人ロケットアトラスが打ち上げ後の上昇で大破した場面の記録映像。(このシーンはよくチャレンジャーの打ち上げと誤解されるが、チャレンジャー号爆発事故は本作品の3年後の出来事で。) 燃え盛るエンジンが地上へまっすぐに落ちていく様子が見られます。最後に冒頭の「グレート・ギャラリー」の絵文字のカットが現れ、この作品は一回りのサイクルを完成させて終了します。ラストは冒頭のショットとほぼ同じカットですがが、冒頭の壁画のひょろ長い暗い影はそこにはなく、かたちの異なるモチーフの壁画が用いられています。

映像と番号がマッチしていないところがありますが、ご愛嬌という事で何卒宜しくお願い致します。(笑)