チャールズ・イームズ Charles Eames 夫婦でミッドセンチュリーのデザインを導いたマルチ・デザイナー




  新しいクライアント様からの仕事や、新しい種類の仕事が次々と入り、やる気いっぱいのアルバトロデザイン代表 猪飼です。 家具が関係する仕事も入り、色々と家具についてリサーチしています。 インテリアは、家具の配置や小物などのバランスによって絶妙に雰囲気が次々と変わるものです。今回はミッドセンチュリー周辺の家具をリサーチしていたので、本日は当時の家具デザインを代表する天才チャールズ・イームズ及びイームズ夫妻の生い立ち、デザイン、コンセプトに焦点を当ててみたいと思います。

1.チャールズ & レイ イームズ夫妻 Charles Ormond & Ray Eames とは

デザイン家具を少し掘り下げると、確実に目に付く名前が「イームズ」という名前です。 イームズ夫妻のデザインした椅子を代表する家具デザインは、ミッドセンチュリー(1900年代の中頃、つまり1950年代を中心とした40年~60年)期のアメリカに強烈な衝撃を与え、以降の家具の方向性を全く変えてしまったほどの影響を与えました。

しかしイームズ夫妻は家具デザインだけでなく、グラフィックデザイン、プロダクトデザイン、建築デザイン、さらには写真や映像もプロとして二人で撮影する優秀なマルチデザイナーでした。  彼らの提案したデザインは世界中のデザインの観念を変え、そのデザイン哲学は世界じゅうのデザイナーに今も支持され続けています。 ビジネス、デザイン、そして生涯のベスト・パートナーであった二人の仕事はどれも実に革命的なデザインで、60年~70年の間にモダンデザインというムーヴメントまで引き起こしました。

全ての中心人物は夫のチャールズ・イームズ(1907-1978)です。 14歳の頃から父の形見(父親は12歳で死去)であったカメラを使って写真を撮ることに夢中でした。 高校時代は製図事務所でバイトとして働き、製図や設計の方法を仕事から身につけたそうです。 その後建築家を目指し、大学へ入るもののあまりに革新的にモダンなデザインばかりを提唱し、退学させられてしまいます。 その後は別の大学を卒業し、大学院を出て同校の大学院インダストリアルデザインの教授となります。 初めの妻と結婚し、子供を儲けるも1941年には離婚しています。

離婚後、当時はかなり尖ったデザインとして認識されていたチャールズ・イームズのデザインは徐々に世の中に認められだし、デザインコンペで賞をとりはじめます。 そんな頃、同じ大学院の教授であったレイ・カイザーと結婚し、二人で大学院を辞職して本格的なデザイン活動に励みます。 二人の感性は一致し、次々とパワフルなデザインを興します。 実に様々な分野に手を出し、中でもプロダクトデザイン作品として作った「レッグ・スプリント」と呼ばれる当時の木製ギブスはアメリカ海軍に採用され、15万本も製造される事となります。 これが二人の初の大量生産品となりました。

Eames Lounge Chair debut in 1956 on NBC
1956年 イームズ ラウンジ・チェアの発売を宣伝するイームズ夫妻の映像

Eames Lounge Chair Assembly Short Film
イームズ ラウンジ・チェアの発売記念映像

2. イームズ夫妻のデザインと功績

木製ギブス「レッグ・スプリント」で成功を収めた二人はチャールズ・イームズとレイ・イームズの二人はデザインだけでなく家具の材質の開発(木による合板素材の開発や、ファイバーグラスによる家具の開発)や、家具雑誌の編集などを行い、精力的に活動しました。

1950年になると、イームズ夫妻の仕事は建築、家具デザイン、展示会プロデュース、ショートフィルム制作、写真家として幅広く多岐にわたりました。 1930年代~1940年代は建築デザイン、1940年代~1950年代は家具デザインで世界的に注目を集めます。 また、映像の制作は生涯に渡り、チャールズ・イームズが1987年8月21日、心臓発作で亡くなるまで続けられました。 妻のレイ・イームズが亡くなったのはなんと、丁度10年後の同日1988年8月21日でした。

イームズ夫妻が家具デザインで成功した背景には、家具の老舗メーカー、ハーマン・ミラー社との相互協力もありました。 家庭用家具メーカーであったハーマン・ミラー社はデザイン家具という理念を経営に取り入れ、イームズ夫妻や、ギルバート・ロイド、イサムノグチといった世界中の家具デザイナーとの連携で世界的に有名な会社へと育ちました。
チャールズ・イームズ、及びイームズ夫妻の主な仕事 (Wikipediaより)

建築
1936年 ディンスモア・ハウス ロバート・ウォルシュと共同設計
1938年 マイヤー邸 ロバート・ウォルシュと共同設計
1949年 イームズ邸(ケース・スタディ・ハウスNo.8)
1949年 エンテンザ邸(ケース・スタディ・ハウスNo.9)エーロ・サーリネンと共同設計

家具
1945年 プライウッド・チェア
1948年 ラ・シェーズ
1950年 プラスティック・チェア
1951年 ワイヤーメッシュ・チェア
1956年 ラウンジチェア&オットマン
1958年 アルミナム・グループ

映像
1953年 コミュニケーション入門
1957年 おもちゃの汽車のトッカータ
1972年 SX-70
1977年 パワーズ・オブ・テン

The Making of The Fiberglass Chair
イームズ夫妻の開発したファイバーグラスによる椅子の製造方法

3. 家具デザイナン以外でのイームズ夫妻

初期は建築デザイナーとしても多くの作品を残したイームズ夫妻ですが、代表作は二人の自宅といえます。 モンドリアン柄のような幾何学的なフレームをした自宅は緑に囲まれた閑静な場所に建てられ、内部はしゃれた家具や照明、小物で溢れていました。 家具と家、インテリアのデザイン融合を実証した家として、二人の亡くなった今でも多くのファンが訪れているそうです。

また、イームズ夫妻はショートフィルムの撮影もこなし、当初まだ数少なかった新しい電機製品のCMや、イメージ映像を撮り続けていました。

charles & ray eames-sx 70
イームズ夫妻の撮ったSX70の広告フィルム

1950’s EAMES solar toy! The do-nothing-machine.
イームズ夫妻の撮ったフィルム ソーラー・トイ

4. イームズ夫妻 まとめ

ミッドンチュリーの時代、つまりモダニズム・デザインが一気に花開いた時代は、イームズ夫妻やヴェルナード・パントン、イサム・ノグチ等、インダストリアルデザインから家庭用のラグジュアリ・デザインへと急速に移行した時代でもありました。

デザインを重視した家具が世界的に注目を集め、ニュースとなり、優雅さの象徴となったのです。このアメリカで始まったムーブメントは日本も含めた全世界中にも広まりました。  この時代は家具だけでなく、グラフィック、建築、音楽がモダニズムのゆるやかな理想の元に次々に刺激しあって開花し、ある意味デザインの絶頂を迎えた時代でもあります。 デザインするために新しい素材や製法を考え、また、新しい材質がデザイナー達を刺激しました。

現在はリプロダクトとして、当時の優れたデザインの家具を再生産したものが多く存在しますが、そのうちの多くは材質が安価な物に変えられてしまい、当時のままの重くて重厚感のあった素材を使用したものは非常に希少となっています。

製品もデザインも一時的で重視されなくなった消費社会の今、またモダニズムのようなデザイン・ムーブメントは起きない物でしょうか・・・ いわばデザイナーの大航海時代のような状態に、現在のデザイナーとしてはとても憧れてしまいます。 しかし、生涯をかけて刺激しあえる夫婦なんて、素敵ですね。

Related Post 関連記事
マシュー・バーニー Matthew Barney 「拘束のドローイング」「クレマスター」から観る独自の現代美術感覚 今年の目標はアウトドアライフの充実とデッサンの本格的な習得を掲げつつも、あまり時間を割けていないアルバトロデザイン代表 猪飼です。 今日からかなり暑くなるようで、夏の到来に恐...
バディ・ホリー Buddy Holly ビートルズやウィーザーに影響を与えた 悲劇のロカビリー・シンガー   クーラー効かせ過ぎて喉が痛いアルバトロデザイン代表 猪飼です。 本日は引き続きフランス人インターンのティボ君による記事です。 エルヴィスプレスリーや、ビートルズといったロック...
ナイキのCM特集 ワールドカップからクリエイティブ広告まで仕掛ける世界トップ企業のCM    いつか映像の仕事も受けたい気持ちを忘れないアルバトロデザイン代表 猪飼です。 映画やショートフィルム、アートアニメーションやモーショングラフィックなど多くの映像を観れば観る...
Josh Keyes ジョシュ・キース 構成を操り、文明と自然にメッセージを込めるアクリル画家 こんにちは、最近他のインターンの方とも仲良くなることが出来て嬉しい森です。久しぶりのブログ担当です。 今回ご紹介するのは可愛らしい動物を現代分かと自然を融合させた精密なタッ...
ヴェルナー・パントン Verner Panton ミッドセンチュリーの空間、家具、光を操るデザイナー はじめまして。  関西から首都東京へやってきたインターンの森です。初の仕事にブログを頼まれてドキドキしながら書いております。 今回代表より指示を受け、紹介させて頂くのは昨年...
デザインドライヤー特集 おしゃれなデザイン家電のある生活   なんとか仕事の峠を越えた感のあるアルバトロデザイン代表 猪飼です。 寝不足で食事をとる時間も惜しいところでした。なかなかブログが毎日更新できずに大変申し訳ございません。 ここ...








にほんブログ村 デザインブログへ FC2 ブログランキングへ 人気ブログランキングへ

← Previous post

Next post →

4 Comments

  1. いつも楽しく記事を読ませていただいています。
    あのステキな椅子達にはこんな背景があったんですね。デザインの背景や歴史をとても丁寧にご紹介されていて、好きなブログです。今回初めてコメントさせていただきました。

  2. 学生時代建築をかじっていたので、イームズの存在もストライクなネタで楽しく拝見させていただきました。
    イームズのラウンジチェア&オットマンは憧れの家具ですね。。。しかし、あの椅子が似合う家に住まないことには始まりませんが。。。。
    お仕事がお忙しいかとは思いますが、また更新を楽しみにしています。。

  3. IKAI

    >brfさん
    学生時代に建築を勉強されていたんですね!!
    仕事が立て込み、なかなか更新できずに大変申し訳ないです。
    家具は本当にちょっと手を抜くと一気に部屋の雰囲気が変わってしまいますよね。イームズ・チェアやミッドセンチュリーの時代はとにかく全てがオシャレで、デザイン黄金期としていつも憧れの時代です。

  4. IKAI

    >Yukiさん
    コメントありがとうございます。イームズの椅子は特徴的且つデザインもよくて、私も大好きです。
    最近本業が忙しく、なかなか投稿できていませんでしたが気を引き締めて今月からはまたちゃんと定期的にポストしていこうと思っているので、今後とも宜しくお願い致します!

コメントを残す